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第4話 育霊神社

ผู้เขียน: 水鏡月聖
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-03-13 19:33:15

ななせも僕たちと同じようにレンタルサイクルでここまで来ていた。そのまま三人で育霊神社に向かい、ひとまず境内に参拝して手を合わす。

たいてい山の入り口というものには何らかの神社があるもので、山は神聖な場所であり、そこにはいる許可と無事を祈るためにもその存在は重要だが、今から裏山でひとを呪おうとしているものが、その前に神様に手を合わせるというのはなんと滑稽だろうか。

呪いの名所と言われるその山道は、想像以上に険しい道のりだった。呪いのスポットとして有名な奥の院まではおよそ三十分。当然街灯などもあるわけでもなく、昼ならともかく深夜の丑の刻にここを登ることはよほど困難に思える。つまり、それほどに強い恨みを持ったものが意を決して登るものなのだろう。

ほどなくして山道は終わり、なだらかな森林となる。よく見ればあたりの木々にはくぎを打ち付けたであろう傷跡や、幹に深くめり込んで抜くことも出来なくなった、錆びた五寸釘が見受けられる。

「それじゃあ、この辺りで呪いましょうか」

 と、上田がつぶやく。まるでピクニックでお弁当を食べようと言い出すような物言いだ。

 リュックから藁人形を取り出した上田は打ち付けやすそうな樹を物色するようにあたりをうかがい、めぼしい樹を見つけて、「ここがいいですね」とつぶやく。時間はすでに午後の二時を大きく過ぎて三時の手前だ。一応、丑の刻と言えば丑の刻範囲ギリギリだと言えなくもない。来る途中に寄り道してしまったのがあだとなったか。まあ、丑の刻参りと言っても昼に行うくらいだ。時間などさほど重要なものではないだろう。

「なあ、ところで上田。いったい誰を呪うことにしたんだ?」

 右手に藁人形、左手には五寸釘を握りしめた上田が不敵な笑みを浮かべながらに振り向く。

「た~か~の~く~ん。いまさら何を言ってるんですかあ? なんで高野君にここまで付き合ってもらっているのか、よく考えてみてください」

「や、やっぱり、ぼ、僕、なのか?」

「だってそうじゃありませんか。果たして呪いの藁人形は有効なのかどうか、検証するためにはその後、動向観察できる対象じゃなきゃ意味ないじゃないですか。それに、入れる髪の毛は新鮮なものであるほうが効果が大きいように思えるんですね」

「い、いや、ちょっと待てよ」

「何をいまさら。高野君、呪いなんて存在しないって啖呵切っていたじゃないですか。それなのに何をいまさら日和っているんです? 呪いなんてないのだからいちいち日和る必要なんてないはずです」

 そう言いながら上田はリュックのポケットから鋏を取り出して迫ってくる。

「いや、べ、別に呪いなんてもの怖れているわけじゃないさ。だ、だけどさ、やっぱり今からおまえを呪うと言われると、心地のいいものじゃないだろ」

 上田から逃げるように後ずさる僕の背を、ななせが後ろから押し返す。

「マコトもいい加減観念なさい。ここまで来たのに何もせずに帰るというわけにもいかないでしょ」

「だ、だけどさあ」

「あ、なんでしたら伏見さんでも構わないですよ。呪った相手の動向調査ができるなら相手は誰でも構わないですから。ああ、そういえばこんなところで偶然わたしたちに出会って、ついてくることになるなんて、言ってしまえば運命みたいなものですよね。神様が今日の呪いのために生贄として差し出してくれたのかもしれません」

 上田は、持っている鋏をななせのほうに差し出す。

「ア、アタシ? な、なんでそんなことに」

「運命です、あきらめてください」

 上田がななせに迫る。今こそ男気を見せるときだ。ななせを護るためという名目があるならば、僕は呪いなんて怖くない。

「わかったよ。僕がやる!」

 なんて、要するにななせに対して点数稼ぎをしたいだけなわけだが……

「そう、それじゃあよろしくね」

 ななせケロリとした表情で上田から鋏を受け取り、それを僕に差し出す。

 観念して前髪の端のほうを少し切り取る。ななせは上田に背を向ける形で僕の前に立ち、鋏と切り取った髪の毛を受け取る。そうすると、背中を向けている上田から見えないように、胸元に垂れている自分の髪の毛の毛先をそっと切り取り、僕の髪の毛と混ぜて束ねた。

「な、なにを……」

 ななせは上田に聞こえないような小さな声で囁く。

「大丈夫。運命は共有するから」

 上田はななせから受け取った髪の毛をポップな藁人形に詰め、『呪 高野聖』と書かれたお札を藁人形時の間に挟み、樹の幹に逆さまにした人形の左胸にヘッドがハート型になった五寸釘を打ち込む。

 カーン、カーンと森林の中に釘を打つ音がこだまする。

 嬉しそうにくぎを打ち付ける上田を僕は眺め、ななせはさらに森の奥のほうをぶらぶらと歩きまわっていた。

 藁人形の胸に深々と釘を打ち終わった上田はご満悦のようだ。

「なあ、ところでなんで藁人形を逆さまに打ち付けるんだ?」

「そりゃあ、いろいろやってみたほうが検証の価値があるじゃないですか」

「そうはいってもさ、普通とは違ったやり方で呪ったせいで十分な成果が上げられないなんてこともありうるだろう?」

「大丈夫です。ちゃんと調べたうえでやってますから」

「なら、かまわんが……なんて、呪いなんか起きないほうがいいんだけどな。僕としては」

「それより、何か変わった様子はないですか? 胸が、痛くなったり熱くなったりはしていませんか?」

「そんなすぐに効果が出るかよ。つか、出てもらったら困るわ。呪いなんてあるわけないだろ」

「いやいや、効果、出てもらわないと困りますから。こっちはわざわざ藁人形セットを買って、こんなところまで呪いを掛けにやってきたわけですから」

「そんなことよりも僕の身の上を心配しろよ」

 そんな無駄話をしているところに、森林の奥のほうからななせの声が響く。

「マコトー! 大変だよ! ちょっとこっちに来て!」

 声を頼りに森の奥に入り、ななせの差す樹に括りつけられた藁人形。

 見た目はシンプルな良くある藁人形だ。五寸釘が体の中央と、両足との合計三本が打ち付けられている。人形と樹との間に挟まれたお札には『呪 進藤隼人』と書かれている。

「これは、ちょっと……穏やかではないですね」

 さっきまで喜び勇んで人形に釘を打ち付けていた上田が言う。

「さすがにこれはちょっとヤバいわね」

 神妙な面持ちの二人に、僕はちょっとした違和感を持ち、聞いてみることにした。

「ところでさ、この進藤隼人って人、どんな人なのかな」

 ななせと上田が二人そろって僕のほうを見る。

「本気で言っているんですか? うちの学校の生徒で進藤隼人を知らない人なんていないと思っていました」

「ああ、もしかして、うちの学校の生徒……とか?」

「マコト、シンドウハヤトっていうのはうちのサッカー部のエースだよ。今年三年でもうすぐ引退だけど、プロからのスカウトが来てるっていう話だし」

「そんなにすごいのか?」

「うちのサッカー部って、全国でも結構いいところまで行ってるし、そこのエースなんですからすごくないわけがないでしょ」

「しかもさあ、シンドウ君って、超イケメンで学校中の女子からモテまくってるのよ。それを知らないっていうマコトのほうがどうかしてるわよ」

「なるほど、そういう訳か……。よし、それじゃあ僕も釘打ちに参加することにしよう。ここで確実に息の根を止めておかないと後々わが校すべての男子生徒に不幸が訪れる」

「マコトって、最低だね……」

「いや、だって男子生徒みんなの敵じゃん」

「何言ってんのよ、シンドウ君一人とその他烏合のモテない男子たち全員なんて、天秤にかけてもシンドウ君一人のほうが重いに決まってるでしょ」

「暴論だな……」

「正論よ」

「よし、わかった。やっぱり殺そう。どこかに余っている釘はないのか?」

 あたりを探すふりをして周りを見渡す。そこでふと、足元に白い三色ボールペンが落ちているのを見つけた。拾ってみると、よくある赤、黒、青の三色ボールペンだ。更に文字が印字しており、僕らの学校の名前と去年のサッカー全国大会出場記念の言葉が印字されていた。

「これ、犯人が落としたものでしょうか?」

「状況から考えるとそうだろうな」

「これを持っているっていうことは犯人はやっぱりウチの学校の生徒……しかも、たぶんサッカー部の関係者ってことよね」

「まあ、言いきれるわけじゃあないけれど、そう考えるのが無難かもしれないな。まあ、聞く限りじゃあ誰かに恨まれることがあってもおかしくはないかもしれないが……確かに穏やかな話じゃない」

 そのとき、森林の中を歩き回る音を衣擦れの音に気づいた僕たちは軽快して身を隠した。

 森林の中を、真っ白な和装で歩いてくる人影を見つけた。

 繁みに身を寄せ合って隠れた僕らは遠巻きに白装束の人物を観察する。状況によっては見てはいけないものを見て、見てしまった僕たちに災いが降りかかるとも限らない。

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    岡山駅の前の桃太郎像の前で待ち合わせだ。この場所のすぐ目の前がバス乗り場のロータリーになっている。ここからバスに乗って新見市まで行き、そこからレンタルサイクルで目的地の神社まで行く予定だ。 上田はまだ来ていない。 バスの時間まであまり余裕はなく、そろそろ来てもらわないとヤバいかなと思い始めていた。なにせ田舎のバスだ。一本乗り過ごしただけですぐに次が来るわけではなく、大幅な時間ロスになってしまう。 そのときちょうどスマホに着信がある。『もしもし、わたし、麻里です。今、高野君の後ろ』「あのなあ。後ろにいるんならいちいち電話かけてこなくてもそのまま声を掛けろよな」 振り返った僕は桃太郎像の裏側に隠れてこちらをのぞき込む上田のところへ歩みよる。「それにしてもさ上田。どういうつもりでそんな恰好なんだよ」「どういうつもりって、まあ、デートですから」 駅前の桃太郎像の前で待ち合わせした上田は、黒いレースのワンピースに白いタイツ。そして右目にはいつもの黒い眼帯。いわゆる地雷系というやつだ。「言っておくが今日はデートじゃないし、僕たちは神社の裏山に入るんだ」「山をなめてるわけじゃないですよ。ほら、これ見てください」 上田の指さす足元は黒と白との二色で構成されるトレッキングシューズだ。「確かにそこは間違っちゃいないけれど、ほかにいろいろ間違いがあるだろう」「あ、この白いタイツなんですけど、ちゃんと虫よけ効果もあるんですよ。入山前にはさらに防虫スプレーも吹きますし」「いや、そうはいってもなあ……まあ、地雷系ファッションというのも、趣味は人それぞれだから文句は言うまい。夏にも関わらずロングスリーブだということもまあいい。だが、呪いだとかそんな山に入ってその恰好じゃあ、なんというかまあ、いろいろヤバすぎるだろ。もはや呪いの申し子だ」「でもですね、だからと言って真っ白の服を着て呪いの藁人形を持っているほうがヤバくないですか? 本格的すぎます」「黒と白以外の服は持ってないのかよ」「持ってないですよ。必要ありませんから。それに知ってる誰かに逢うわけでもありませんからね、高野君にどうみられるかだけが問題なんです。ねえ、わたし、かわいいでしょ?」「お、バス来たぞ」「あ、待て、こら、逃げる気ですか!」 新見市は岡山県の中部にある。県内でも瀬戸内海に接する南部に

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    照りつける夏の日差しから目を伏せたまま階段を昇っていく。 その先にある旧校舎は、より太陽に近い場所だが、そこにはちゃんと日影があり、風もそよぐのでいくぶん涼しい。 すれ違うサッカー部の部員たちは楽しそうに笑いながら階段をかけるように下りながら、夏の日差しがギンギンに照りつける校庭へと向かっていく。 まったくもって僕とは真逆の人たち。頭が悪く、単純で、健康的で、社交的で、女子にモテる人たち。 うらやましくはないはずだ。彼らをねたんだところで、僕には何の見返りもない。むしろ自分の器の小ささをかみしめることで余計にみじめになるだけだ。せめて僕は僕なりの楽しみを見つけよう。 山の斜面の沿って並ぶ僕の通う高校の校舎は、斜面の一番下に校庭、その手前には新校舎があり、山の奥へと昇っていくにつれて校舎の築年数が増えていく。 そして、一番奥にあるのが僕の所属する文芸部のある旧校舎というわけだ。ほとんど山奥の木造建築で、その裏はすぐに手の入っていない山だから、日陰になっていて風通しもよく、エアコンは付いていないがそれなりに涼しい。 旧校舎は現在ほとんど使われていない。廃部寸前の部活が寄せ集められた部活棟になっている。二階には軽音楽部の部室と、黒魔術研究部。一階には競技かるた部と文芸部。競技かるた部は現在ほとんど活動をしていないので、実質一階は文芸部だけのものである。 文芸部員は僕一人、つまりは僕が独占しているというわけだ。 旧校舎の部室に鍵はかかっていないが、盗られて困るようなものもたいしてないから問題ない。 文芸部の部室の戸を開けて中に入ると、「遅かったじゃない」という言葉で僕を出迎えてくれる美少女がいた。 伏見ななせは二階の軽音楽部の部員だ。文芸部の部室においてある湯沸かしポットが目当てでいつもふらりと立ち寄っては勝手に僕の用意しているインスタントのコーヒーを淹れて飲む。「こんなに暑い中、よくホットのコーヒーなんか飲むよな」 僕は鞄から取り出したペットボトルのアイスコーヒーのキャップをひねり、一口喉に流し込む。生ぬるくてとてもうまいとは言い難い。「アタシさ、冷え性だから。真夏でほとんどエアコンなんて使わないもん」 言いながら、両手で抱えるように持つマグカップに注がれたホットのコーヒーをふうふうしながら口をつける。「そりゃあ、ななせと結婚する奴は気の

  • 呪い呪われ、恋焦がれ   第1話 序文

    ――人を呪わば穴二つ 他人を呪えばその呪いは自分に帰ってくる。 その昔陰陽師は相手を呪う際、呪い返しに逢うことを想定し、相手と自分の入る墓の穴、二つを用意していたという。 つまり、生半可な気持ちで相手を呪うようなことをしてはならないという戒めだ。 返して言えば、その覚悟のある人間にしてみれば、単なる等価交換に過ぎないともいえるだろう。

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